医療法人社団正圭会 福地医院 | |||||||||||||||||||||
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体脂肪の生理学と疾患 | |||||||||||||||||||||
名古屋大学総合保険体育科学センター教授 佐藤祐造 |
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21世紀に入った現在、家庭、職場におけるOA化、コンピューター化などいわゆる文明化された日常生活での身体運動量の減少は、グルメ志向による欧風化された食事(高脂肪食)と相俟って、肥満・肥満症(平成10年度2,300万人)など“生活習慣病”を増加させている。すなわち、運動不足は筋におけるインスリン抵抗症を招き、糖代謝異常を来す。インスリン抵抗症は代謝性高インスリン血症をもたらし、2型糖尿病の他、高血圧、高脂血症、動脈硬化症を引き起こし、“シンドロームX”、“マルチプルリスクファクター症候群”、“死の四重奏”、“インスリン抵抗性症候群”、“内臓脂肪症候群”などとも呼称される病態の発症、進展に重要な役割を果たしている。 | |||||||||||||||||||||
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1.肥満・肥満症の定義 | |||||||||||||||||||||
肥満は脂肪組織が過剰に蓄積した状態と定義される。また、肥満症とは肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか、その合併が予測される場合で、医学的に減量を必要とする病態をいい、疾患単位として取り扱う。 |
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2.脂肪細胞の機能 |
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脂肪細胞は単に脂肪というエネルギーを蓄積しているだけでなく、多くの生理活性物質を分泌する内分泌臓器である事が明らかとなっている。脂肪細胞から分泌される物質(adipocytokines)には、TNF-α(インスリン抵抗性)、レプチン(肥満遺伝子産物、食欲調節)、PNI-1(線溶系の阻害因子)、アンヂオテンシノーゲン(血圧調節)、HBEGF(ヘパリン結合性EGF、平滑筋細胞増殖因子)、resistin(インスリン抵抗性)などが同定されている。 |
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3.肥満に起因ないし、減量を要する健康障害 |
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肥満に起因ないし関連する減量を要する健康障害を表1に示す。 |
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4.肥満症の診断 |
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肥満症の診断は次のように行う。 肥満と判定されたもの(BMI25以上)のうち(表2)、以下のいずれかの条件を満たすもの 1)肥満に起因ないし関連し、減量を要する(減量により改善する、または進展が防止される)健康障害を有するもの 2)健康障害をともないやすいハイリスク肥満 身体計測のスクリーニングにより上半身肥満を疑われ、腹部CT検査によって確定診断された内臓脂肪型肥満 |
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5.肥満症への対策 |
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1)食事療法 2)運動療法 (1)身体運動の効果:@運動時には糖・脂質など大量のエネルギーが筋肉で消費され、肥満の防止、改善効果がある。糖尿病患者の血糖値も低下する。Aeuglycemic clamp法を用いた私共の研究成績によれば、最大酸素摂取量に影響を及ぼさないような軽度の身体トレーニングでも、長期にわたって継続すれば、個体のインスリン感受性が糖、脂質代謝面で改善する。また、肥満者、肥満糖尿病患者に食事制限と身体運動を行わせれば、体脂肪が選択的に減少する。個体のインスリン感受性改善(儁CR)と1日の歩数(身体運動量)とは正の相関関係にある。一方、身体運動を実施せず、断食で体重を減少させても体の過剰な脂肪は減少せず、筋肉の萎縮を招く。さらに、ジョギングなどの有酸素運動は、重量挙げのような無酸素運動よりインスリン抵抗性改善に関してより効果のあることが判明している。Bトレーニング効果の発現には、筋量の増大、糖輸送担体(GLUT4)の増加など筋性因子が主体をなしている。しかし、血中TNF-α、resistinの減少など脂肪組織性因子も無視できない。C運動はストレス解消手段としても有用である。 (2)運動処方の実際:@軽・中等度の運動(40〜50歳代で脈拍数:120/分、60〜70歳代:100/分)を1回10〜30分、週3〜5日行う。A運動の種類としては、散歩、ジョギング、水泳、自転車、ラジオ体操など全身の筋肉を使う運動があげられる。B日常生活が多忙で、特に運動を行う時間がない場合、エレベーターの代わりに階段を使うなど、日常生活の中に身体運動を組み込むことでも効果があり、歩数計で一万歩以上を目指す。 |
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この講座は、名古屋大学総合保険体育科学センター教授 佐藤祐造先生の講演要旨をまとめたものです。 | |||||||||||||||||||||
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